Michael Schneider / Printmaker
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ミヒャエル・シュナイダー氏の作品

 

 木版という仕事は、形のないまたは、物質 を持たない“イメージ”に版木、紙、インクといった“物質(=媒体)”で身体を与えることだといえる。“イメージ”に“物質(=媒体)”で身体を与えると いう仕方は、イメージの移行を感じさせることでもある。

 1990年代、彼はおそらく古代人が刻み付けたであ ろう石盤に触発されて制作を続けて来た。“未判読石盤”という隠されたテーマは、未だ読み方の解らない記号の判読の可能性、未判読である(または、かつて は読むことが可能だった)ことから訪れる図像としての神秘性を同時に提供していた。また、石盤そのもののイメージを版木に移行する手立てとして、石器によ る打刻での製版も開始される。打刻された版木は、石のキャラクターを版面に蓄え、石のイメージを紙へと移行させる。ここで、摺り取られたイメージは、未判 読の石盤が持っていた記号と石盤の物質の記憶を同時に保有することになるのである。

 現在、彼の作品からは強い記号性は消え、 写真製版(ポリマープレート=感光樹脂版)によるイメージがやはり石器の打刻製版の木版に組み合わされる。作品に取り込まれた写真画像は、はじめ未判読石 盤にあった記号の変化した形ともいえる無機質な都市風景の断片であったが、近作では打刻に用いられる石器そのものの写真画像が使われる。ここで、作品には 記号から意味への飛躍があったといえるかも知れない。彼がこの3年あまり取り組んでいるポリマープレート (感光樹脂版)凹版の技法は、イメージの移行にさらに変化をもたらしたように思われる。凹版の強いレリーフを持ちながら精度の高い石の画像(細部に到るま で、すぐに石と認識できるような)が作品に入り込むことで、石のテクスチャーだけを残して木版からは記号性は消えていく。つまり、記号に代わって「石」と 書き、発話することの出来る“言葉”という媒体を侵入させたことになる。そして、さまざまな媒体に移行していったイメージは、作品によって再構成されるの である。

 木版画を制作しながら、石の記憶に深く降 りていく作家の方法は謎ともいえるが、これも未判読のままに観る姿勢を鑑賞者が保つことができれば、それぞれの精神のうちに腑に落ちる事柄もあるのではな いだろうか。

                               (テキスト:三井田盛一郎)

 

オーストリア/ウィーン在住の木版画作家

ウィーン芸術アカデミーにてグラフィック アート、版画を学ぶ

1993'97年まで東京芸術大学版画第2研(野田哲也研 究室)に留学

以後 石器を版木に打ち付けるユニークな製 版法で水性木版画を制作

2001年以降ポリマープレート(光感光樹脂版)に よる制作研究に取り組む

その制作は、つねに版画芸術に対する批評的 な態度に貫かれている



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